この記事の要点

  • 屈折計が実際に測るのは光の曲がり方(屈折率)で、Brixも水分%も換算によって出る数字です。
  • 国際はちみつ委員会の換算表は20℃前提で、水分20%は屈折率1.4865に当たります。温度は1℃あたり0.00023で補正します。
  • 水分%から水分活性を推定する式では、水分20%で約0.62です。ただし式による概算で、実測値ではありません。

「糖度80度」と書かれたはちみつは、水分が何%なのでしょうか。屈折計の液晶に出た数字を、そのまま信じてよいのでしょうか。この疑問は、屈折計が何を測っているかを押さえると整理できます。屈折計のしくみ自体は屈折計のしくみと糖度の目安で触れているので、ここでは換算表そのものを読みます。

朝の台所で屈折計のプリズムに蜂蜜を一滴のせ、光にかざして数字を読もうとしている淡彩イラスト

屈折計が読んでいるのは「屈折率」——糖度も水分も、そこからの換算

屈折計が測っているのは、プリズムを通る光の曲がり方、つまり屈折率です。Brixも水分%も、その屈折率を別の物差しに置き換えた換算値にすぎません。

水は1.3330、はちみつは1.49前後——数字の幅を知る

国際はちみつ委員会(International Honey Commission、IHC)の方法書では、水の屈折率を1.3330としています。水分が少ないはちみつほど糖が濃く、光は大きく曲がります。同じ換算表では、水分13.0%で1.5044、18.0%で1.4915と読みます。はちみつの屈折率が1.49前後になるのはこのためです。

Brix目盛りは砂糖水換算の近似であること

Brixとは、果汁100g中に糖分が何g含まれるかを示す濃度で、単位は百分率(%)です。株式会社アタゴ(屈折計メーカー)の解説によれば、はちみつの主成分は果糖とブドウ糖です。そのためBrix目盛りは、屈折率を濃度に置き換えた近似の物差しとして読む必要があります。

はちみつ用屈折計に水分目盛りが並ぶ理由

はちみつの基準は水分%で書かれています。糖度の目盛りだけでは基準と照らしにくいため、はちみつ用の屈折計には水分の目盛りも並びます。

換算表の正体——Chatawayのデータと、20℃という前提

IHCの換算表は、Chatawayのデータからひとつの式で導かれた表です。水分は、屈折率をこの標準表に照らして求める値と定義されています。

真空乾燥で測った水分と屈折率を突き合わせた表

IHCの方法書によれば、表はChatawayのデータをもとに、Wedmore式で導かれたものです。実際に水分を量ったはちみつの屈折率を突き合わせて作った対応表、と考えると理解しやすいと思います。

13%で1.5044、20%で1.4865——0.2%刻みの読み方

表の例を並べます。

水分(%)屈折率(20℃)
13.01.5044
18.01.4915
20.01.4865
25.01.4740

この数字から概算すると、水分が1%増えるたびに屈折率は0.0025前後ずつ下がります。屈折率の小数第4位は、水分では0.04%ほどに相当します。表が細かい刻みで書かれているのは、そのためです。

表は20℃で測った前提で書かれている

IHCの方法書は、20℃に保った屈折計で測ることを前提にしています。20℃以外で測った場合は、次の章で述べる補正が必要です。

換算表の上で20%と22%はどこにあるか

20%は屈折率1.4865、22%はそれより少し低い位置にあります。20%と22%は、全国はちみつ公正取引協議会が定める組成基準の数字です。

水分20%以下・国産22%以下という組成基準

「はちみつ類の表示に関する公正競争規約」の組成基準は、全国はちみつ公正取引協議会によれば7項目あります。水分は20%以下で、国産はちみつは22%以下です。ほかに、果糖及びぶどう糖の合計が60g/100g以上(甘露はちみつは45g/100g以上)、しょ糖が5g/100g以下(一部の蜜源は10g・15g以下)などがあります。屈折計で確かめられるのは、このうち水分だけです。

販売ページの「糖度80度」を水分の言葉に直す

糖度80度は、おおまかに糖が約80%という意味です。残りを水分とみなすと約20%で、規約の上限と並びます。ただしこれは引き算による目安にすぎず、実際の換算は屈折率を経由します。糖度78度前後なら、水分22%に近い位置です。

水分が低い=良い蜜、とは言い切れない理由

規約の基準は上限であって、低ければ優れているという意味ではありません。蜜源や採蜜の時期によって水分は変わります。数字の高低で品質の優劣は決められません。

数字がずれる分かれ目——温度と結晶

蜂蜜の瓶を低めの湯にそっと浸し、温度計を添えて温度を確かめている朝の台所の淡彩イラスト 温度をそろえ、結晶を溶かしてから測る

屈折計の読み違いは、おもに温度と結晶から生じます。

温度:20℃から5℃ずれるとどれくらい動くか(概算)

IHCの方法書では、20℃より高ければ1℃あたり0.00023を足し、低ければ引きます。たとえば5℃ずれると0.00115になります。先ほどの換算(屈折率0.0025が約1%)で概算すると、水分では0.5%弱に当たります。20%と22%の差を見たいときには、無視できない大きさです。

ATC付きなら自動、なしなら補正を足し引きする

ATC(自動温度補正)つきの屈折計は、この補正を機械が行います。ATCがない場合は、温度を測って自分で足し引きします。冷蔵庫から出した直後は避け、室温になじませてから測るほうが確実です。

結晶:50℃で溶かして混ぜてから測るのが標準の手順

結晶が残っていると正しく読めません。IHCの手順は、密閉して50℃の湯せんで結晶を溶かし、冷まして混ぜてから測るというものです。溶かし方は固まったはちみつの戻し方も参考になります。

2回測って平均する、プリズムを毎回ふく

IHCの方法書は、2回測って平均することを定めています。前の試料が残らないよう、プリズムは毎回ふきます。

水分%の先にある数字——水分活性への読み替え

梅雨の台所で蓋を開けたままの蜂蜜の瓶が、雨に曇る窓辺に置かれている淡彩イラスト 開けたままの瓶は、空気中の水分を吸う

水分%からは、水分活性を推定することもできます。水分活性とは、食品中の水がどれだけ自由に動けるかを0〜1で示す、保存性の指標です。糖度との違いは糖度と水分活性の違いで整理しています。

638件の観測から作られた推定式

Pérez、Sánchez、Baeza、Zamora、Chirifeは、Food and Bioprocess Technology 2巻4号(2009)で、12か国・10研究・638件の観測をまとめました。花由来はちみつの水分活性を、屈折計による水分から推定する式 aw=0.2686+0.01756×水分% を提案しています。

水分17%で約0.57、20%で約0.62、22%で約0.66(式からの概算)

この式で計算すると、次のようになります。いずれも式からの概算で、実測値ではありません。

水分(%)水分活性(推定式による概算)
17約0.57
18約0.58
20約0.62
22約0.655

開封後に吸湿して数字が上がると何が起きるか

水分が増えれば、推定される水分活性も上がります。はちみつは空気中の水分を吸う性質があり、そのしくみははちみつが空気中の水分を吸うしくみにまとめています。水分と酵母の関係は水分と酵母による発酵で扱っています。

台所での数字の使いどころと、変わらない注意

屈折計でわかるのは水分までです。使いどころと限界を分けて考えます。

屈折計でわかるのは水分まで——純粋かどうかはラベルで

屈折計の数字は、純粋かどうかの証明にはなりません。名称欄や原材料名などの裏ラベルで確かめます。純粋・加糖・精製の見分け方が参考になります。

保存中の変化を見るなら同じ温度・同じ手順で

保存中の変化を見たいときは、毎回同じ温度、同じ手順で測ります。条件がそろっていれば、数字の上下を比べられます。

1歳未満の乳児には与えない(加熱しても防げない)

厚生労働省は、1歳未満の乳児にはちみつ、はちみつ入りの飲料やお菓子を与えないよう呼びかけています。ボツリヌス菌(芽胞)の耐熱性は120℃4分とされ、通常の加熱や調理では死にません。はちみつは一般に、包装前に加熱処理されていません。水分が低くても、この注意は変わりません。詳しくは1歳未満にはちみつを与えてはいけない理由をご覧ください。

よくある質問

Q:はちみつ用屈折計の「Brix」と「水分」の目盛りはどちらを見ればよいですか

はちみつの基準は水分%で書かれているので、水分目盛りを優先して読みます。Brixは砂糖水換算の近似で、はちみつの糖組成とは少し違います。

Q:冷蔵庫から出したはちみつをすぐ測ってもよいですか

おすすめしません。換算表は20℃前提で、ATCがなければ1℃あたり0.00023の補正が要ります。室温になじませてから測るほうが安心です。

Q:白く固まったはちみつも屈折計で測れますか

結晶が残ったままでは正しく読めません。IHCの手順は、密閉して50℃で溶かし、冷まして混ぜてから測るというものです。

Q:水分18%のはちみつと20%のはちみつは何が違いますか

どちらも規約の範囲内です。推定式では水分活性が約0.58と約0.62で、高いほうが吸湿や発酵に注意が要ります。品質の優劣を示す数字ではありません。

Q:屈折計で本物のはちみつかどうか分かりますか

分かるのは水分までです。純粋かどうかは、名称欄や原材料名など裏ラベルで確かめます。

六角門は、京都で養蜂を軸にした健康ブランドを準備しています。蜂を迎える前の今は、はちみつや養蜂について調べたことを、こうして読みものにまとめています。数字を怖がらずに読めるようになる手がかりになればと思っています。