どちらも甘くて、どちらも台所に置きっぱなしで傷まない。それなのに、砂糖は固まらず、はちみつは冬になると白く固まる。同じ「糖」の仲間なのに、なぜ振る舞いがこれほど違うのか。答えは甘さの量ではなく、糖の組み合わせと水の有無にあります。

この記事の要点

  • はちみつと上白糖の違いの大半は、水分(17.6gと0.7g)と、糖の組み合わせ(果糖・ブドウ糖か、ショ糖か)で説明できます。
  • 砂糖は最初から結晶で、はちみつは溶けきれないブドウ糖が後から結晶になります。固まる速さは14℃前後で最も速くなります。
  • どちらも自由水が少ないので腐りにくいのですが、砂糖は乾いているから、はちみつは糖が水を抱えているから、と理由の形が違います。

朝の台所に、はちみつと砂糖を並べて量る様子を描いた淡彩イラスト

比べる前に——同じ100gで並べた、はちみつと上白糖の成分表

はちみつと上白糖の成分を100gで並べると、違いの大半は水分と糖の種類に集約されます。文部科学省の日本食品標準成分表(食品成分データベース)の数字は次のとおりです。

100gあたりはちみつ上白糖
エネルギー329kcal391kcal
水分17.6g0.7g
炭水化物81.9g99.3g
灰分0.1g0g
カリウム65mg2mg
鉄0.2mgTr(微量)

水分17.6gと0.7g——カロリー差の正体

100gあたりのカロリーは、はちみつの方が低く出ます。これは糖の質が違うからではなく、水分が17.6g含まれていて、その分だけ糖の量が少ないからです。水を抜いて糖だけで比べれば、エネルギーの差は小さくなります。どちらが健康的かという話ではなく、水が重さを占めているかどうかという計算上の違いです。

大さじ1杯で比べると逆転するわけ

台所では100gではなく、大さじ1杯で量ることが多いはずです。はちみつは濃い液体で、同じ大さじ1杯でも粉の砂糖より重くなります。そのため、計量スプーンで測ると、カロリーが逆転する場合があります。成分表の数字は「重さあたり」であることを、頭に置いておくと混乱しません。

この記事で比べる5つの軸

この記事では、次の5つの軸で順に比べます。糖の組み合わせ、固まり方、腐りにくさ、湿気との付き合い方、糖以外の成分です。

原料の違い——花の蜜と、サトウキビ・テンサイの汁

はちみつは蜂が熟成させた天然の甘味物質で、砂糖は植物の汁から取り出した結晶です。出発点がまったく違います。

表示基準が定める「はちみつ」の定義

東京都 保健医療局の「はちみつ類品質表示基準実施要領」によると、はちみつとは、みつばちが植物の花みつを集め、巣に貯え熟成させた天然の甘味物質です。つまり、人が糖を取り出して作るのではなく、セイヨウミツバチなどが集めた蜜を、巣の中で変化させたものです。

砂糖は「取り出して結晶にする」食べもの

砂糖は、サトウキビやテンサイの汁から糖を取り出し、精製して結晶にしたものです。農林水産省によると、白い砂糖の結晶は本来無色透明で、光が乱反射するために白く見えます。氷砂糖は、時間をかけて結晶を大きく育てた砂糖です。はちみつが「集めて熟成させるもの」なら、砂糖は「取り出して結晶にするもの」と言えます。

違いの根っこ——ショ糖ひとつか、果糖とブドウ糖の二つか

蜂蜜の瓶と角砂糖、二つの匙に分けた蜜を朝の台所に並べた淡彩イラスト ショ糖ひとつか、果糖とブドウ糖の二つか

違いの根っこは、糖の組み合わせです。グラニュー糖はほぼ純粋なショ糖で、はちみつは果糖とブドウ糖が中心で、ショ糖はわずかです。文部科学省(科学技術・学術審議会 資源調査分科会)の資料でも、グラニュー糖や白ざら糖は精製度が高くほぼ純粋なしょ糖の結晶で、はちみつの主成分はぶどう糖と果糖、比率はおおむね1対1とされています。

花の蜜のショ糖が、巣の中で二つに分かれる

花の蜜には、もともとショ糖が多く含まれています。蜂が蜜を巣に運び込む過程で、蜂の体内にあるインベルターゼ(転化酵素)がショ糖を果糖とブドウ糖に分けます。この分かれた状態を転化糖と呼びます。くわしい仕組みは花の蜜のショ糖が果糖とブドウ糖に分かれるしくみにまとめています。

数字で見る組み合わせ:果糖・ブドウ糖・ショ糖・その他の糖

FAO(国連食糧農業機関)の資料にある米国産はちみつの平均組成は次のとおりです。

成分割合
水分17.2%(13.4〜22.9)
果糖38.2%
ブドウ糖31.3%
ショ糖1.3%
麦芽糖など7.3%

ショ糖がほぼすべてを占める砂糖と、果糖とブドウ糖が主役のはちみつ。これが構造の違いです。

甘さの感じ方が違う理由は個別記事へ

糖の組み合わせは、甘さの感じ方にもかかわります。その話ははちみつの甘さが砂糖と違う理由で扱っています。はちみつの全体像ははちみつの成分の全体図も参考になります。

上白糖とはちみつの意外な共通点——ビスコという転化糖

上白糖は、はちみつと同じく「しっとりする」性質を持たされた砂糖です。農林水産省によると、上白糖はしっとり感を出すために、ビスコと呼ばれる糖液をかけています。砂糖も一枚岩ではありません。

グラニュー糖・上白糖・三温糖のちがい

文部科学省の資料では、車糖(上白糖・三温糖)はグラニュー糖より水分がやや多く、結晶が0.07〜0.26mmと小さいとされています。農林水産省によれば、グラニュー糖の結晶は上白糖よりやや大きく、さらさらしています。

しっとりする砂糖と、湿気を吸うはちみつ

上白糖のしっとり感は、糖液が結晶の表面を包むことで生まれます。一方、はちみつのしっとり感は、果糖とブドウ糖が水を引きつける性質に根ざしています。表面の仕立てと、中身の性質。似た手触りでも、由来は異なります。

固まり方の違い——乾いた結晶と、白く固まる液

白く結晶したはちみつと透明なままのはちみつの瓶を、木棚に並べた朝の淡彩イラスト 白く固まるのも、透明なままなのも、はちみつの姿

砂糖は最初から結晶で、はちみつは後から結晶になります。はちみつが固まるのは、傷んだからではなく、糖の性質によるものです。

はちみつが冬の台所で白くなるのはブドウ糖

はちみつの中のブドウ糖は、水に溶ける量に限りがあります。溶けきれない分が小さな結晶になり、それが核となって全体が白く固まっていきます。ショ糖が主体の砂糖は、すでに結晶の状態です。

5℃以下と25℃以上では固まりにくい

FAOの資料によると、結晶化は25℃以上と5℃以下ではほぼ起きず、14℃前後で最も速くなります。冷蔵庫に入れると固まりにくいのに、涼しい台所では固まりやすい、という体感はこの数字で説明がつきます。

固まっても劣化ではない——戻し方は個別記事へ

固まったはちみつは、結晶の形が変わっただけで、劣化ではありません。戻し方は固まったはちみつの戻し方で詳しく書いています。

腐りにくさの違い——水がない砂糖と、水が使えないはちみつ

どちらも腐りにくいのは、微生物が使える自由水が少ないからです。ただし、その理由の形は違います。

水分活性とは——菌が使える水の割合

水分活性とは、食品の中の水のうち、微生物が増殖に使える自由水の割合を示す指標で、0から1の値をとります。秋田県健康環境センターによると、食品中の水には成分と結びついた結合水と、微生物が使える自由水があり、水分活性(Aw)が0.6以下ではほとんどの微生物が増殖できません。

砂糖は乾いているから、はちみつは糖が水を抱えているから

砂糖は、そもそも水分が0.7gしかありません。はちみつは水分が17.6gありますが、濃い糖が水を抱え込み、自由水がほとんど残りません。秋田県健康環境センターも、砂糖などを加えると自由水が溶解に使われ、微生物の増殖が抑えられると説明しています。仕組みははちみつの水分活性が低い理由にまとめています。

はちみつ水やシロップにすると守りが外れる

はちみつを水で薄めると、糖が抱える水より水の量が増え、自由水が現れます。砂糖もシロップにすれば同様です。薄めた時点で腐りにくさは外れるため、水で薄めると腐らない性質が消える理由を知っておくと安心です。

湿気との付き合い方の違い——固まる砂糖と、薄まるはちみつ

湿気を吸ったとき、砂糖は固まり、はちみつは薄まります。開封後の扱いは、この違いで決まります。

砂糖は湿気で固まり、乾くとまた固まる

砂糖は湿気を吸って結晶の表面が溶け、乾くと再び結びついて塊になります。しっとり系の上白糖でも、保管の状態で同じことが起こります。

はちみつは湿気を吸って水分が上がり、18%を超えると発酵に近づく

FAOの資料によると、はちみつは湿度60%で水分18.3%と釣り合い、それより湿った空気からは水を吸います。水分18%未満なら発酵の心配はほとんどなく、18%を超えると近づきます。仕組みははちみつが湿気を吸うしくみで詳しく扱っています。

台所での置き方:砂糖は密閉、はちみつは密閉と乾いたスプーン

砂糖は密閉して湿気を避け、はちみつは密閉に加えて、乾いたスプーンですくうのが基本です。水の混入が、はちみつの水分を上げる最も身近な原因になるためです。

糖以外の1%に何が入っているか——量で見る微量成分

糖以外の成分は、あっても量はわずかです。数字で見ると、はちみつの微量成分は「豊富」と言うほどではありません。成分の話にとどめて見ていきます。

ミネラル:上白糖とはちみつ、三温糖とグラニュー糖

日本食品標準成分表では、はちみつはカリウム65mg、鉄0.2mg、マンガン0.21mgです。上白糖はカリウム2mg、鉄はTr(微量)です。砂糖の中でも、農林水産省によるミネラル含有量は、グラニュー糖が約0.01%、三温糖が0.25%と差があります。

ビタミンと有機酸:含まれる量の目安

はちみつにはナイアシン0.3mg、葉酸7μg、ビタミンB2 0.01mgが含まれ、ビタミンCは0mgです。FAOの資料では、はちみつのpHは3.91で、酸性寄りです。いずれもごく少量で、食事全体から見れば補助的な数字です。

色の濃い蜜ほど灰分と鉄が多い傾向

文部科学省の資料によると、灰分と鉄はソバなど濃色のはちみつで高い傾向があります。FAOの米国産平均では灰分0.169%です。蜜源による差はありますが、全体としてはわずかな量です。

どちらを使うか——場面で分ける判断軸と、1歳未満への注意

使い分けは、優劣ではなく条件で決めます。そして、はちみつを1歳未満の乳児に与えないことは必ず守る注意です。

砂糖が向く場面、はちみつが向く場面

場面向きやすい方
すっきりした甘さ、クセを出したくない砂糖(グラニュー糖など)
焼き色をしっかりつけたい砂糖
しっとり仕上げたい、風味を足したいはちみつ
冷たい飲み物に溶かしたいはちみつ

はちみつで置き換えるときの換算や焦げやすさは、砂糖のかわりにはちみつを使うときの換算で扱っています。みりんや甘酒も含めた比較は砂糖・はちみつ・みりん・甘酒の違いにあります。

「砂糖入りはちみつ」はラベルで分かる

東京都 保健医療局の基準では、加糖はちみつは、はちみつに異性化液糖その他の糖類を加えたもので、はちみつの含有率が重量百分比で60%以上のものです。精製はちみつは、臭いや色を取り除いたものです。見分け方は純粋・加糖・精製はちみつの見分け方にあります。

1歳未満の乳児には与えない——加熱しても同じ

1歳未満の乳児にはちみつを与えてはいけません。乳児ボツリヌス症の恐れがあるためで、消費者庁・厚生労働省が周知している重要な注意です。加熱しても防げません。理由は1歳未満にはちみつを与えてはいけない理由に詳しく書いています。

よくある質問

Q:はちみつと砂糖、100gあたりのカロリーはなぜはちみつの方が低いのですか?

日本食品標準成分表では、はちみつは水分17.6g、上白糖は0.7gです。この水分の差が、カロリーの差の主な理由です。糖の質で差がつくわけではありません。大さじ1杯で量ると、はちみつの方が重いため、逆転することがあります。

Q:砂糖は固まらないのに、はちみつが白く固まるのはなぜですか?

砂糖は最初から結晶です。はちみつは溶けきれないブドウ糖が低温で結晶になります。FAOの資料では、14℃前後で最も速く、5℃以下と25℃以上ではほぼ起きません。

Q:はちみつも砂糖も腐らないと聞きますが、理由は同じですか?

共通点は、微生物が使える自由水が少ないことです。ただし、砂糖は乾燥しているから、はちみつは糖が水を抱えて水分活性が低いから、と理由が分かれます。

Q:はちみつのビタミンやミネラルは、砂糖と比べてどれくらい多いのですか?

日本食品標準成分表では、カリウムははちみつ65mgに対して上白糖2mgです。鉄ははちみつ0.2mg、上白糖はTr(微量)です。数字の上では差がありますが、量はわずかで、成分の違いとして受け止めるのが妥当です。

Q:上白糖とグラニュー糖、はちみつに近いのはどちらですか?

しっとりする点では上白糖が近いと言えます。農林水産省によると、上白糖はビスコという糖液をかけています。グラニュー糖はほぼ純粋なショ糖の結晶です。

Q:砂糖の代わりにはちみつを赤ちゃんの離乳食に使ってもよいですか?

使えません。1歳未満の乳児には、乳児ボツリヌス症の恐れがあるため、はちみつを与えません。加熱しても防げません。くわしくは1歳未満にはちみつを与えてはいけない理由をご覧ください。

六角門は、京都で養蜂を主軸にした健康ブランドを準備しています。蜜蜂を迎える前の今は、はちみつや養蜂について調べ、公開されている数字を読み解く時間を大切にしています。台所で「なぜ」と思うことを、これからも出典のある言葉で書いていければと考えています。