この記事の要点

  • はちみつが固まる速さは、蜜源ごとのブドウ糖と果糖の割合の違いで決まり、品質の優劣ではありません。
  • 全国はちみつ公正取引協議会は、結晶しにくい順にアカシア、レンゲ・ミカン・クローバー、ナタネ・ウド・ソバと整理しています。
  • 固まる・固まらないだけでは真偽は判定できません。確かめるならラベルの名称と原材料名を見ます。

同じ棚に並べたのに、菜の花の瓶だけが白く固まり、アカシアは透明なまま。偽物をつかまされたのか、それとも傷んだのか。そう不安になって調べはじめる人は少なくないようです。先に答えを言えば、どちらでもありません。この差は、花の種類ごとに違う糖の組成から説明がつきます。

朝の台所の棚に並ぶ、白く結晶した蜂蜜の瓶と透明なままの蜂蜜の瓶

同じ棚の二つの瓶が、別の冬を過ごす

はちみつの固まる速さの違いは、品質の差ではなく、蜜源が持つ糖組成の差です。同じ温度で保管しても、花が違えば結晶のできる速さが変わります。

先に結論——差をつくるのはブドウ糖と果糖の割合

はちみつの主成分は果糖とブドウ糖で、ブドウ糖の多い蜜ほど結晶しやすい、と日本生活協同組合連合会は説明しています。アカシアは果糖の比率が高く、結晶しにくい蜜です。糖組成とは、蜜に含まれる糖の種類とその割合のことです。花が違えば糖組成が違い、固まる速さも変わります。

固まるのは劣化ではないという前提

結晶化は、傷んだサインではありません。北海道立消費生活センターの商品テストも、結晶しても品質上は問題がないと明記しています。固まった瓶を前にして慌てる必要はない、というのが出発点です。

固まるのはブドウ糖だけ——二つの糖の性格の違い

結晶になるのは主にブドウ糖で、果糖は液のまま残りやすい糖です。固まった瓶の白い部分はブドウ糖の結晶、その隙間の液は果糖を多く含む部分、と考えるとわかりやすくなります。

はちみつは溶けきれない量の糖を抱えた液体

はちみつは、水に対して溶けきれないほどの糖を抱えた液体です。この状態を過飽和といいます。過飽和とは、溶けられる限度を超えて糖が溶けている状態のことです。不安定なので、きっかけがあればブドウ糖が結晶として出てきます。結晶化は、はちみつが本来持っている性質の表れです。詳しいしくみと戻し方の基本は、結晶化のしくみと戻し方の基本にまとめています。

FAOが示す原則——水分が少なくブドウ糖が多いほど速い

FAO(国連食糧農業機関)の資料は、水分が少なく、ブドウ糖が多いほど結晶化は速いと述べています。資料に示された平均組成は、水分17.2%、果糖38.2%、ブドウ糖31.3%です。

ブドウ糖の幅は22.0〜40.7%、花でここまで動く

同じ資料では、ブドウ糖の含有量は22.0〜40.7%と幅があります。平均は31.3%でも、蜜によって倍近い開きがあるわけです。この幅こそが、花による固まりやすさの違いの土台になっています。甘さの感じ方とも関わる話で、果糖とブドウ糖の比率が甘さの感じ方をどう変えるかも併せて読むと、二つの糖の性格が見えてきます。

アカシアと他の蜜を、実測値で比べる

アカシアの花と菜の花畑を並べた淡彩イラスト。蜜源による糖組成の違いを思わせる アカシアと菜の花——蜜源が違えば糖の割合も違う

アカシアは、果糖がブドウ糖を大きく上回る蜜です。北海道立消費生活センターの商品テストの数字で見ると、その差がはっきりします。ここでは銘柄ごとの比較ではなく、平均値と蜜源別の傾向だけを見ていきます。

アカシア9銘柄の平均——果糖42.9g・ぶどう糖27.7g

同センターの商品テストでは、アカシア9銘柄の平均が、100gあたり果糖42.9g、ぶどう糖27.7g、しょ糖3.4gでした。全銘柄で果糖のほうが多かったと報告されています。ブドウ糖が少ないので、結晶のもとになる糖が控えめです。

百花は果糖37.3g・ぶどう糖35.2gとほぼ拮抗

同じテストの百花3銘柄の平均は、果糖37.3g、ぶどう糖35.2gでした。二つの糖がほぼ同じ量です。百花蜜(ひゃっかみつ)とは、さまざまな花の蜜が混ざったはちみつのことで、単一の花を主とする単花蜜と区別されます。表示の考え方は単花蜜と百花蜜の表示ルールで整理しています。

菜の花(ナタネ)はブドウ糖が果糖を上回る側にある

ナタネ(菜の花)は、アカシアとは反対側にいます。Foods誌(MDPI)に掲載された Scripcă & Amariei, 2021(スチャヴァ大学)では、ブドウ糖が果糖より少ない蜜(アカシアなど)は結晶が遅く、多い蜜(ナタネなど)は速いとされています。測定例では、ブドウ糖が100gあたりアカシア27.24g、ナタネ46.30gでした。

蜜源ブドウ糖(100gあたり)出典
アカシア(9銘柄平均)27.7g北海道立消費生活センター
百花(3銘柄平均)35.2g北海道立消費生活センター
アカシア(測定例)27.24gFoods誌
ナタネ(測定例)46.30gFoods誌

もう一つの物差し——ブドウ糖と水分の比

糖の割合に加えて、ブドウ糖と水分の釣り合いも結晶の速さを左右します。Foods誌の論文は、ブドウ糖を水分で割った比を目安に使っています。

比が1.7未満ならゆっくり、2.0を超えると速い

論文によれば、ブドウ糖/水分の比が1.7未満だと結晶はゆっくり進み、2.0を超えると速いとされます。たとえば水分が少なければ、同じブドウ糖量でもこの比は大きくなります。ブドウ糖が多いだけでなく、水が少ないことも固まりやすさにつながる、というFAOの原則と同じ方向の話です。

同じ花でも年や瓶で速さがずれる理由

水分もブドウ糖の量も、年や採れた場所で動きます。そのため、同じ花の名前の瓶でも、固まる速さには幅が出ます。年ごとに成分が動く話は同じ花でも年ごとに成分が動く話で触れています。花の名前はあくまで目安であり、保証ではありません。

花の名前で見立てる、三つの段

ラベルの花の名前から固まりやすさを見立てるなら、三段の目安があります。全国はちみつ公正取引協議会は、花によって果糖とブドウ糖の割合が違うことから、結晶のしやすさを次のように整理しています。

段蜜源
結晶しにくいアカシア(ニセアカシア/ハリエンジュ)
中程度レンゲ・ミカン・クローバー
結晶しやすいナタネ・ウド・ソバ

固まりにくい——アカシア

アカシア蜜の植物名は、ニセアカシア(ハリエンジュ)です。果糖が多いため、液体のまま長く保ちやすい蜜です。

中くらい——レンゲ・ミカン・クローバー

三つとも中程度の段にあります。季節や置き場所によって、固まる瓶も固まらない瓶もあります。

固まりやすい——ナタネ・ウド・ソバ

ナタネ(菜の花)、ウド、ソバは、結晶しやすい段です。冬を待たずに白くなることもあります。

レンゲは資料によって評価が分かれる

レンゲは、公取協では中程度ですが、北海道立消費生活センターは、テストしたレンゲ1銘柄(果糖38.9g、ぶどう糖34.2g)を結晶化しやすいと説明しています。1銘柄の値なので断定はできませんが、段の境目に近い蜜と受け取るのが自然だと思います。

百花蜜は瓶ごとに違うと考える

百花蜜は混ざる花次第なので、瓶ごとに違うと考えるのが現実的です。商品テストでは、果糖とぶどう糖がほぼ拮抗していました。

花以外に速さを動かすもの

蜜源のほかに、温度と結晶核が速さを動かします。結晶核とは、結晶が育つ足がかりになる小さな粒のことです。

14℃前後でいちばん速く、25℃超と5℃未満では進みにくい

FAOの資料では、結晶がもっとも速く進むのは14℃前後で、25℃を超える場合と5℃未満では、ほとんど進まないとされます。冷蔵庫に入れれば固まらないわけではなく、むしろ冬の室温に近い温度帯が進みやすいということです。置き場所の考え方は結晶化が進む温度と置き場所にあります。

花粉などの粒が結晶のきっかけになる

花粉などの固体粒子も、結晶を速めるとFAOの資料は述べています。粒が足がかりになるためです。結晶の粒が粗くなるか細かくなるかにも温度が絡み、結晶の粒が粗くも細かくもなる理由で触れています。

固まらない瓶は偽物なのか、固まる瓶は本物の証なのか

固まる・固まらないだけで、真偽は判定できません。「固まるのが本物」も「固まらないのは偽物」も、どちらも言いすぎです。

アカシアが固まらないのは糖の割合で説明がつく

アカシアが冬に固まらないのは、果糖の比率が高い蜜源の性質で説明がつく、と日本生活協同組合連合会は回答しています。固まらないという事実だけで、混ぜものを疑う根拠にはなりません。

確かめるならラベルの名称と原材料名を見る

確かめるなら、結晶の有無ではなく表示を見ます。名称と原材料名に何が書かれているかが手がかりです。見方は純粋・加糖・精製をラベルで見分ける方法に整理しました。結晶の上に液が分かれて不安になったときは、結晶の上に液が分かれたときも参考になります。

固まりやすさで選び、固まったら戻す

蜂蜜の瓶を低めの湯にそっと浸し、温度計を添えた朝の台所の淡彩イラスト 固まったら、60℃を超えない湯せんでゆっくり戻す

選ぶときは固まりやすさを使い方に合わせ、固まったら湯せんで戻します。

液のまま使いたいならアカシア、塗るなら固まる蜜という選び方

飲み物に溶かす、かけるといった使い方なら、固まりにくいアカシアが扱いやすいでしょう。パンに塗るなら、固まった蜜のなめらかな口当たりを好む人もいます。好みの問題で、優劣はありません。

湯せんは60℃を超えないように

固まった瓶は、湯せんで戻せます。全国はちみつ公正取引協議会は、60℃以上にならないようにと案内しています。

1歳未満の赤ちゃんには与えない

厚生労働省は、1歳未満の赤ちゃんがハチミツを食べると、乳児ボツリヌス症にかかることがあるとしています。ボツリヌス菌の芽胞は120℃で4分とされる耐熱性があり、通常の加熱や調理では死にません。湯せんや加熱をしても、1歳未満には与えないでください。1歳以上にとっては、リスクの高い食品ではないとされています。理由は1歳未満の赤ちゃんにはちみつを与えてはいけない理由にあります。

よくある質問

Q:アカシアはちみつが冬でも固まらないのは、混ぜものがあるからですか?

果糖の比率が高いという蜜源の性質で説明がつきます。北海道立消費生活センターの商品テストでも、アカシア9銘柄すべてで果糖のほうが多い結果でした。真偽は結晶の有無ではなく、ラベルの名称と原材料名で確かめてください。

Q:菜の花のはちみつがすぐ白く固まりました。傷んでいますか?

傷んではいません。ブドウ糖の多い蜜に起きる自然な変化で、品質上の問題はないとされています。湯せんで60℃を超えないように温めれば、戻せます。

Q:レンゲはちみつは固まりやすいのですか、固まりにくいのですか?

資料によって説明が分かれます。公取協は中程度、北海道立消費生活センターは、テストした1銘柄(果糖38.9g、ぶどう糖34.2g)を結晶化しやすいとしています。実測値でもブドウ糖が比較的多いため、幅のある蜜と考えるとよいと思います。

Q:結晶しやすいはちみつと結晶しにくいはちみつの種類を教えてください。

公取協の整理では、結晶しにくいのがアカシア、中程度がレンゲ・ミカン・クローバー、結晶しやすいのがナタネ・ウド・ソバです。あくまで傾向で、年や産地、保存で変わります。

Q:同じ花のはちみつなのに、去年の瓶より早く固まったのはなぜですか?

条件がいくつか重なって変わります。水分とブドウ糖の比がずれると速さが変わり、保存温度が14℃前後に近いほど進みやすくなります。花粉など結晶核になる粒の量も影響します。

Q:百花蜜は固まりやすいですか?

混ざる花次第で、瓶ごとに違います。北海道立消費生活センターの商品テストでは、百花3銘柄の平均が果糖37.3g、ぶどう糖35.2gと、ほぼ拮抗していました。

六角門は、京都で養蜂を軸にした健康ブランドを準備しています。まだ蜂を迎える前で、こうして蜜のことを調べ、書き留めている段階です。はちみつの変化を知っておくことも、日々をととのえる手がかりになると考えています。

冬に固まるかを、買う前に見立てる手順

花の名前で三段に分けられることは、ここまでで見てきました。ただ、実際の瓶はそれだけでは決めきれないことが多いです。店頭や手元の瓶で見立てるなら、次の順に確かめていくと迷いにくいかなと思います。

手順1:名称が単花蜜か、百花蜜か、混ぜた蜜かを見る

最初に、ラベルの名称に花の名前が一つだけ書かれているかを確かめます。「アカシア」とあっても、ほかの蜜と混ぜた商品なら、混ぜた蜜のブドウ糖の分だけ固まりやすい方へ寄ると考えられます。三段の目安が当てはまりやすいのは単花蜜です。

手順2:瓶の濁りと、底や縁の白い粒を見る

透明な瓶より、うっすら濁った瓶のほうが早く固まる可能性があります。FAOの資料にあるとおり、花粉などの粒は結晶のきっかけになるからです。底や縁に白い粒がもう見えている瓶は、結晶が始まっています。家に持ち帰ったあとも、固まるのは早いと見ておくのが自然だと思います。

手順3:置き場所の温度を当てはめる

最後に、置き場所が14℃前後になるかを考えます。冬の北側の台所や、暖房を入れない部屋の棚はこの温度に近づきやすい場所です。菜の花のように固まりやすい段の蜜をそこに置くと、早めに白くなりやすいと考えられます。

つまずきやすい点:固まっている=手を加えていない、ではない

結晶させて、なめらかなクリーム状に仕上げた商品もあります。固まっていることも、固まっていないことも、加工の有無の証拠にはなりません。真偽を確かめる手がかりは、やはりラベルの表示です。

ブドウ糖/水分の比を、手元の数字で試算してみる

1.7と2.0という目安は、数字を当てはめてみると実感しやすくなります。ただし、市販の瓶のラベルにブドウ糖や水分の量はふつう書かれていません。栄養成分表示の「炭水化物」はいろいろな糖の合計なので、ブドウ糖の量の代わりには使えない点に注意が必要です。

そこで、ここでは仮定として、水分をFAOの資料の平均値17.2%に固定して計算してみます。ブドウ糖は、本文で紹介した実測値を使います。

蜜源ブドウ糖水分(仮定)ブドウ糖/水分
アカシア(9銘柄平均)27.7g17.2約1.61
FAOの平均組成31.3%17.2約1.82
百花(3銘柄平均)35.2g17.2約2.05
ナタネ(測定例)46.30g17.2約2.69

水分を同じとみなした場合でも、アカシアは「ゆっくり」の側(1.7未満)に入り、ナタネは2.0を大きく超えます。百花は2.0の境目のすぐ上で、瓶ごとに違うという見立てとも矛盾しません。

ただし、これは水分を一律にそろえた仮の計算です。実際の瓶は水分が上下するので、比も動きます。たとえばブドウ糖の量が同じでも、水分の少ない瓶ほど比は大きくなり、固まりやすい側へ寄ります。表の値を「この瓶の値」と受け取らないようにしたいところです。

戻したのに、すぐまた固まるのを減らすには

湯せんで液に戻しても、しばらくして再び固まることがあります。固まりやすい段の蜜ほど起きやすいようです。つまずきやすいのは次の点かなと思います。

結晶を溶かし切らないと、残った粒から固まり直す

表面が透明になっても、底や縁に細かな結晶が残っていると、それが次の結晶のきっかけになります。花粉などの粒が結晶を速めるのと同じ理屈です。瓶を時々ゆっくり回して、底まで溶けたかを確かめてから湯から上げるほうがよいと思います。

何度も温め直すより、小分けにする

瓶ごと温めては冷ます、を何度も繰り返すと、そのたびに熱が加わり、香りや風味が落ちる心配があります。固まりやすい蜜なら、一度戻したときに使う分だけ小さな容器に分けておくと、温め直す量を減らせます。

湯や水滴を瓶に入れない

湯せんのときは、ふたの隙間から湯が入らないようにします。スプーンについた水滴も同じです。はちみつに水が入ると、水分の多いところができてしまいます。FAOの資料では、水分の多いはちみつは発酵しやすいとされています。固まりにくくしたいからといって水を足すのも、同じ理由で避けたほうがよいと考えます。