店頭で瓶を並べてみると、同じ「はちみつ」という名前なのに、片方は透き通った金色で、もう片方はほとんど黒に近い茶色をしている。もらいものと買ったものを並べて、色の違いに戸惑った経験がある方もいるのではないでしょうか。色が濃いほうは古いのか、質が落ちているのか。実はその答えは、時間の経過よりも先に、どの花から集められた蜜かというところにあります。

この記事の要点

  • はちみつの色の違いは、主に蜜源植物(花の種類)の違いによるもので、優劣を示すものではありません。
  • 色が濃いはちみつには、ミネラルやポリフェノールなど蜜源由来の微量成分が多く含まれる傾向があるとされています。
  • 保存中に色が濃くなるのは糖のメイラード反応という自然な変化で、白く濁って固まるのは結晶化であり、どちらも劣化とは異なります。

淡い金色から黒褐色まで、色の異なる蜂蜜の瓶が朝の光の中に並ぶ様子

はちみつの色を決めているのは、まず花である

はちみつの色を最初に決めているのは、時間でも保存方法でもなく、蜂が集めた花の種類です。同じ養蜂家が同じ時期に採ったものでも、採れた花が違えば色はまったく異なります。

同じ「はちみつ」でも色は一種類ではない

「はちみつ」という言葉から思い浮かべる色は、人によってばらつきがあります。透明感のある淡い金色を思い浮かべる人もいれば、とろりとした濃い茶色を思い浮かべる人もいるでしょう。どちらも間違いではなく、はちみつという食品は、そもそも淡い色から黒褐色まで幅広いグラデーションの中に存在しています。ラベルを見比べると、色の違いは珍しいことではなく、むしろ当たり前の個性だとわかります。

蜜源植物という考え方——味も香りも色も花で決まる

蜜源植物とは、蜂が蜜を集めてくる花のことです。はちみつの味も香りも、そして色も、大部分はこの蜜源植物によって決まります。花蜜そのものにわずかに色や成分の違いがあり、それが蜂の巣の中で凝縮されることで、はちみつの色として現れてきます。はちみつの味は蜜源植物で決まるという話にもあるように、風味の個性を語るうえで蜜源植物は欠かせない切り口であり、色もその延長線上にあると考えると理解しやすくなります。

色のもとになっているもの——蜜に含まれる成分の違い

はちみつの色の濃淡には、蜜源由来の微量成分の量や種類が関わっているとされています。健康との関係を述べるものではなく、あくまで「何が含まれているか」という成分の違いの話です。

濃い色のはちみつに多いとされる微量成分

色の濃いはちみつには、ミネラルやポリフェノールといった微量成分が比較的多く含まれる傾向があるとされています。ミネラルとは、はちみつにごくわずかに含まれる無機質の総称で、蜜源植物によって含まれる量が変わります。ポリフェノールとは、植物が持つ色素や苦味などのもとになる成分の総称で、これも花の種類によって差があります。これらの成分が蜜にわずかな色みを与え、それが凝縮されることで濃い色として現れると考えられています。ここで大切なのは、色が濃い=これらの成分が多いという傾向はあっても、それが健康への効果を保証するものではないという点です。成分が「含まれる」ことと、体にどう作用するかは別の話として切り分けて考える必要があります。

色は「等級」で測られてきた——海外の色の物差しの話

はちみつの色を客観的に扱うために、海外にはPfundスケールと呼ばれる色の等級の物差しが存在します。Pfundスケールとは、光の透過度をもとにはちみつの色を数値化して分類する仕組みのことです。こうした物差しがあるのは、色が味や品質の優劣を示すものではなく、あくまで「特徴を分類するための指標」として扱われてきたことの裏づけでもあります。淡い色から濃い色まで段階的に分けられているだけで、上の等級ほど良い、下の等級ほど悪いという序列を意味するものではありません。

淡い色の代表と、濃い色の代表——蜜源別の色の傾向

アカシアの花と菜の花畑が並び、淡い色の蜜源を思わせる情景 アカシアなど淡い色の蜜源となる花々

蜜源植物ごとの色の傾向を知っておくと、瓶を見たときにおおよその見当がつくようになります。ここでは代表的な単花蜜を対比してみます。単花蜜とは、特定の一種類の花から集められた蜜を主体とするはちみつのことです。

淡い金色——アカシア・レンゲなど

淡い色の代表としてよく知られているのが、ニセアカシアという樹木の花から集められるアカシアはちみつと、レンゲはちみつです。ニセアカシアは街路樹や河川敷でも見かける落葉樹で、その花から集められる蜜は透明感のある淡い金色になりやすく、クセの少ない穏やかな甘さが特徴とされています。レンゲはちみつも同様に色が淡く、結晶化しやすい性質があることでも知られています。

黒褐色——ソバ・クリなど個性派

一方、濃い色の代表とされるのがソバはちみつとクリはちみつです。ソバの花から集められる蜜は黒褐色に近く、独特の香りとコクの強さで知られています。クリはちみつも同様に色が濃く、やや苦味を伴う個性的な風味を持つとされています。どちらも「はちみつが黒い」と驚かれることの多い代表格ですが、それは劣化ではなく、その花が持つ個性がそのまま色に現れた結果です。トチはちみつはこの中間からやや淡めに位置づけられることが多く、蜜源によって色の幅が連続的に広がっていることがわかります。

百花蜜の色が採れた場所や季節で変わる理由

百花蜜とは、特定の花に限定せず、複数の花から集められた蜜が混ざり合ったはちみつのことです。単花蜜と百花蜜の違いや表示のルールについては、単花蜜と百花蜜の違いと表示ルールで扱っていますが、百花蜜は採れた場所や季節によって、周辺に咲いている花の組み合わせが変わるため、同じ「百花蜜」という表示でも色や風味が毎回同じとは限りません。これも優劣ではなく、その土地とその季節ならではの個性だと捉えるのが自然です。

蜜源の傾向代表例色の傾向風味の傾向
淡い色アカシア、レンゲ淡い金色クセが少なく穏やか
中間トチ中間色やや軽やかでまろやか
濃い色ソバ、クリ黒褐色香りとコクが強い個性派
混合百花蜜場所・季節で幅がある採れた環境によって変わる

色が濃いほど味も濃いのか——色と風味の関係

おおまかな傾向として、色が淡いはちみつはクセが少なく、色が濃いはちみつは香りやコクが強い傾向にあるとされています。ただし、これは絶対の法則ではありません。

おおまかな傾向としては対応する

先に挙げたアカシアやレンゲのような淡色系は穏やかな甘さ、ソバやクリのような濃色系は個性的な香味という対応は、多くの場合で当てはまります。これは色のもとになる成分と、香りや味のもとになる成分が、同じ花に由来しているために起こりやすい傾向だと考えられます。

傾向どおりでない場合——色だけで決めつけない

一方で、色は淡いのに香りが強い蜜源や、色は濃いのに比較的穏やかな味わいの蜜源も存在します。花の種類は非常に多く、色と風味の対応関係にはあくまで傾向があるというだけで、例外は珍しくありません。色だけを見て味を断定するのではなく、ラベルに書かれた蜜源植物の名前まで確認することが、実際の風味を知る近道になります。花の蜜がはちみつへと変わっていく過程で成分がどう変化するかについては、花の蜜がはちみつになるまでの成分の変化で詳しく触れています。

買ったあとに色が変わるのはなぜ——時間・温度・結晶化

白く結晶化した蜂蜜の瓶が朝の台所に置かれている様子 白く固まるのは劣化ではなく自然な結晶化

はちみつを買ってしばらく置いておくと、色が濃くなったように見えることがあります。これは多くの場合、劣化ではなく自然な変化です。

時間と温度で少しずつ濃くなる——糖の褐変という現象

はちみつは糖を主成分とする食品で、時間の経過や保存温度の影響を受けて、糖がゆっくりと褐変していく性質があります。この褐変にはメイラード反応と呼ばれる仕組みが関わっているとされています。メイラード反応とは、糖とアミノ酸などが反応して褐色の物質を作り出す化学変化のことで、パンの焼き色やみそ・しょうゆの色づきにも見られる、食品では珍しくない現象です。常温で保存しているうちに色がじわじわと濃くなっていくのは、この反応がゆっくり進んでいるためだと考えられます。

白く濁る・固まるのは結晶化で、劣化ではない

色の変化とは別に、はちみつが白く濁ったり、ざらざらと固まったりすることがあります。これは結晶化と呼ばれる現象で、はちみつに含まれる糖の一部が結晶になることで起こる、純粋に物理的な変化です。白く固まるのは結晶化という自然現象で詳しく説明していますが、結晶化は品質が落ちたことを意味しません。むしろ添加物が少なく糖の性質がそのまま残っている証拠として語られることもあります。

こう変わったら注意——発酵など見分けの目安

色の変化や結晶化とは区別して注意したいのが、容器の中で泡が出ている、酸っぱいにおいがするといった発酵のサインです。こうした変化が見られる場合は、色や結晶化とは異なる理由で状態が変わっている可能性があるため、口にする前に見直したほうがよいでしょう。色が濃くなった、白く固まったというだけであれば、慌てて捨てる必要はありません。

色で選ぶときの考え方——用途と好みから逆算する

色は好みや使い道を選ぶ手がかりとして活用できます。何に使いたいかを先に決めておくと、色からの逆算がしやすくなります。

はじめてなら淡い色から、個性を楽しむなら濃い色へ

はちみつに慣れていない方や、まずクセの少ないものから試したい方には、アカシアやレンゲのような淡い色のものが選びやすいとされています。一方で、香りやコクをしっかり感じたい方、料理に個性を出したい方には、ソバやクリのような濃い色のものが向いていると言われています。どちらが優れているという話ではなく、好みと使い道の問題です。用途別の選び方は用途で選ぶはちみつの使い分け方でも整理しています。

ラベルで蜜源を確かめる——色の理由は裏面に書いてある

色の理由をきちんと知りたいときは、ラベルの裏面に書かれた蜜源植物の表示を確認するのが確実です。全国はちみつ公正取引協議会という業界団体が定める公正競争規約に沿って、蜜源植物名などの表示が行われている商品も多く、色だけで判断するよりも、表示と照らし合わせたほうが実際の風味に近づけます。なお、はちみつを紅茶に入れると黒っぽく変わって見えることがありますが、これは商品そのものの色とは別の理由によるものです。詳しくは紅茶に入れると黒っぽくなる理由で扱っています。加熱と成分の関係についてははちみつと温度の関係もあわせてご覧ください。

よくある質問

Q:色が濃いはちみつのほうが栄養や品質が優れているのですか? 色の濃淡は主に蜜源植物の違いによるもので、優劣を示すものではありません。濃い色のはちみつにはミネラルやポリフェノールといった成分が比較的多く含まれる傾向があるとされていますが、これは成分の違いの話であり、体への効果や品質の優劣を意味するものではありません。

Q:買ったはちみつの色がだんだん濃くなってきたのは傷んでいるのですか? 多くの場合、時間の経過と保存温度によって糖がゆっくり褐変する自然な変化で、傷んでいるわけではありません。ただし、泡立ちや酸っぱいにおいなど発酵を思わせるサインがある場合は、色の変化とは別の問題として見直したほうがよいでしょう。

Q:白く濁って固まってしまったのは色が変わったということですか? それは色の変化ではなく、結晶化と呼ばれる物理現象です。はちみつに含まれる糖の一部が結晶になることで白く濁ったり固まったりしますが、劣化ではありません。湯煎での戻し方については、結晶化を扱った記事で紹介しています。

なお、1歳未満の乳児にははちみつを与えないでください。乳児ボツリヌス症のおそれがあることが消費者庁・厚生労働省から周知されています。色や風味を選ぶ楽しみは、この注意点を踏まえたうえで大人が中心に楽しむものだとご理解ください。

六角門は、京都で養蜂を軸にした健康ブランドとして準備を進めています。まだ蜂を迎える前の段階ですが、蜜源植物やはちみつの色と風味の関係については、こうして調べながら理解を深めているところです。これから蜂を迎え、季節の営みを重ねていく中で、確かめられたことを少しずつお伝えしていきたいと考えています。

花の蜜ではない「黒いはちみつ」もある——甘露蜜という別の系統

黒っぽいはちみつを見て理由を調べるとき、ソバやクリといった花の名前だけでは説明がつかない場合があります。そのひとつが甘露蜜(かんろみつ)です。甘露蜜とは、花の蜜ではなく、樹液を吸った昆虫が出す甘い分泌物を蜂が集めてできたはちみつのことで、海外では「森のはちみつ」のような呼び名で流通していることもあります。

甘露蜜は色が濃く、ミネラル分が多めで、結晶化しにくい傾向があるとされています。ラベルを見ても花の名前が見当たらず、「甘露」「ハニーデュー」「森」「樹木名+はちみつ」といった表記になっている場合は、この系統の可能性を考えてみるとよいかなと思います。

見分けるときの目安は次のとおりです。

  • 花の名前が書かれていないのに、色がかなり濃い
  • 原産国が海外で、森林や樹木を思わせる商品名になっている
  • 甘さの中に、樹脂や黒糖を思わせるような香りがあると説明されている

濃い色=ソバかクリ、と決めてしまうと、ここで説明がつかなくなりやすいです。蜜源が「花」とは限らないという前提を持っておくと、ラベルの読み方が一段ラクになると思います。

同じ蜜源の名前なのに、瓶によって色が違うのはなぜか

「去年買ったアカシアより今年のほうが濃い」「同じレンゲなのに店によって色が違う」という戸惑いは、蜜源の違いだけでは説明できません。同じ蜜源名でも色がそろわない理由は、いくつか重なっていると考えられます。

  • ほかの花の蜜が混ざる割合:蜂は一種類の花だけを厳密に選んでいるわけではないので、同じ時期に咲いている別の花の蜜が少し入ります。その割合は年や場所で変わります。
  • 採れた年の天候と時期:開花の進み具合や採蜜のタイミングで、蜜の濃さや混ざり方が変わるとされています。
  • 巣の状態:長く使われた巣で貯められた蜜は、色がやや濃くなりやすいと言われています。
  • 瓶詰めまでの扱い:流通させるための加温やろ過の程度、瓶詰めからの経過時間でも色みは動きます。

つまり、蜜源名は「色の中心」を教えてくれるもので、ぴったり同じ色を約束するものではない、と捉えるのがよいかなと思います。前に買ったものと色が違っても、それだけで別物や粗悪品と判断するのは早いです。気になる場合は、採蜜地・採蜜年・原産国の表示が前回と同じかを先に確かめると、理由の見当がつきやすくなります。

色を見比べるときにつまずきやすい点——見え方に左右されない比べ方

はちみつの色は、中身が同じでも見え方がかなり変わります。色で判断する前に、次の点をそろえておくと見誤りにくいと思います。

  1. 容器の太さをそろえて考える:光が通る厚みが増えるほど濃く見えます。太い瓶と細いチューブ容器では、同じはちみつでも印象が違ってきます。比べるなら、白い皿やスプーンに少量とって薄く広げるのが確実です。
  2. 結晶しているかどうかを先に見る:結晶化すると細かい結晶が光を散らすため、もとの色より白っぽく淡く見えます。固まった瓶と液状の瓶を並べて「こちらのほうが薄い」と判断するのは、条件がそろっていない比べ方です。
  3. 光の種類をそろえる:電球色の照明の下では全体に赤みや濃さが増して見えます。昼間の自然光に近い場所で、白い背景を置いて見るのが無難です。
  4. 容器の色を確認する:色つきの瓶や不透明な容器では、そもそも中身の色は判断できません。

そのうえで、手元の瓶が「もともと濃い」のか「置いているうちに濃くなった」のかを切り分けたいときは、ラベルの蜜源と見比べるのが出発点になります。淡色系の蜜源名なのにかなり茶色い、開封から長く経っている、コンロの近くや日の当たる棚に置いていた、という条件が重なるなら、保存中の変化が出ている可能性が高そうです。逆に、買った時点から濃く、ラベルが濃色系の蜜源や甘露蜜なら、もとの個性と考えてよいかなと思います。